怒った後は誰もが嫌な気分になるものです。
良い印象を与えることはないし、周囲から信頼すら失ってしまいかねません。
怒る本人もエネルギーを消耗するし、何もなかったかのように直ぐに振る舞うのは難しい。
だからこそ「怒り」をうまくコントロールしていくことは大切であり、軽率な行動で後悔しないためにも冷静且つ穏やかであるべきです。
このように負の面ばかりが目立つ「怒り」ですが、本当に良い面はないのでしょうか?
そんな思いからこの記事を書くに至りました。
調べてみると、
「人間の基本○感情」と言う時、○の中に入る数字は4、5、6・・・と色々あるのですが、それらいずれの「人間の基本○感情」の中には必ず「怒り」が入っています。
そこからしても、「怒り」がとても重要な感情だということが分かります。
必要だから人間に備わっているのです。
ですから当然「怒り」にもプラスの面があるはずなのです。
怒りはサポート、助太刀(すけだち)の存在
「怒り」は人間の基本感情の一つであると先述しましたが、ほかに二次感情とも言われるそうです。
ある物事が発生した際、最初に生じる感情を一次感情、その次に生じる感情を二次感情と呼ぶのだそうです。
例えば、次のような具合です。
物事 | 一次感情 | 二次感情 |
---|---|---|
危害を加えられた | 恐怖 | 怒り |
侮辱された | 嫌悪、悔しい | 怒り |
自己の想定通りに事が運ばない | 警戒、焦り | 怒り |
これまで「怒り」=負の感情と捉え、制御することに重点を置いてきました。
しかし危害を加えられたら、怒りを制御する必要はないでしょう。
生命の危機にあるわけですから、怒り発奮しないといけない状況です。
つまり、それ相応の理由があれば「怒るべき時がある」わけです。
一次感情が発生して、それに誘発されるように怒りが生じる。
言うなれば「怒り」はサポート、助太刀(すけだち)のような存在ではないでしょうか。
特に生きることがより困難な古代では、生死を分ける場面が多かったであろうし、自己安全や防衛のためには自らを奮い立たせる源として、怒りはとても重要な感情だったと思います。
「怒り」=負の感情 として片づけてしまうのは適切ではないでしょう。
しかしここは現代。相手を不快にさせるほどの怒りは注意が必要です。
けれども怒りが助太刀である以上、この現代でも怒りをプラスに作用させることができるのです。
怒りがプラスに働く時
それでは怒りがプラスに働くのはどのような時か、2つの例を紹介します。
1. 負けず嫌い
あのメラメラと燃える秘めた感情は、正しく怒りからくる感情でしょう。
「闘争心」とも言えるでしょうが「悔しい」「負けたくない」という気持ちをバネに、より一層努力したり、何かを始めたりすることは良くある話です。
特にスポーツの世界では、この影響が強いのではないでしょうか。負けたくない、一番になりたい一心で努力する。
お互いに切磋琢磨し、もはや負けず嫌いの域を超越した世界で戦っている感さえあります。
それは「向上心」でもあろうし、代表として背負う責任のようなものでもあるでしょう。
究極的には自分自身との闘いになるのでしょうが、敢えて怒りが自分自身にムチを打っているようにさえ思います。
人は「自己の存在意義や大切なこと、守りたいもののために戦う」のです。
だからこそ怒りのエネルギーが必要であり、逆に怒りにしかできないことだと思います。
これほど強い力を持つ感情は、他にあるでしょうか。
負けず嫌いの例は他にもあります。
どれも負けたくない気持ちが、闘志にスイッチを入れたと言えるでしょう。
学業成績が友人より悪かった → 塾へ通う
昇格/昇給で同僚に先を越されてしまった → 資格取得の勉強に励む
恋人に振られた → ジムに通って相手を見返す
2. 怒りの後押し
迷ってなかなか決断が出来なかったり、初めの一歩が踏み出せなかったりする時、怒りが背中を押してくれることです。
一見自暴自棄のようにも受け取れますが、軽はずみに感情に任せて行動を起こすと言うよりは「いい加減に腹をくくりなさい」「決断しなさい」と怒りに促されているような状況です。
例えば、転職はリスクを伴う活動です。
転職にこぎ着けても、実際に蓋を開けてみないと成功かどうかは分かりません。
しかも新しい環境やルールに慣れねばならず、エネルギーの消耗は激しい。
転職成功ならば全てが報われますが、失敗の場合はダメージが大きい。
これまでの労力が徒労に終わるだけでなく、再び今後を考える必要もあり、落胆どころでは済まされません。
職務経歴にキズを付けたくはないし、取り敢えず2~3年頑張るにしても、そこまで耐えられるかが問題。まして辞めたところで、次が直ぐに決まる保証もありません。
それほど不満がないのなら、勤務時間と待遇バランスの悪いブラック企業に勤めてでもいない限り、転職への決断はつき難いものです。
しかし怒りは、そのようなリスクさえも簡単に押し退けてしまうほどの威力を発揮します。
その爆発的な力に後押しされて一気に舵を切れてしまうので、踏ん切りのつかない、初めの一歩が出せないような状況においては強力な原動力となるのです。
実際私自身も怒りをきっかけに決断したことがあります。厳密に言えば転職ではないのですが、それを実行するには会社を辞める必要があったので、長いこと決心のつかないまま考えていました。
一定の場所に長くいればいるほど、そこでの歴史も積み上がりますから、新たな道に進むのは勇気がいるものです。
しかしある事が起きた瞬間、あっさりと会社を辞める決心がつきました。
まるで薪を斧で割るようにスパっと気持ちが切り替わり、長いこと考えてきたことにサクッと挑戦する意志が固まりました。
ふと自分の中で生じた怒りに、
「お前はこれでいいのか?」
「このままずっと挑戦しなくて良いのか?」と問われているようでした。
あの怒りがなければ、今でも実行していなかったかもしれません。
正に怒りに導かれたようで、行動に移して良かったと今では思っています。
仕事を辞めずに引き続き働いていれば、それなりの恩恵を受けていたことでしょう。
しかし途中下車したことで、見たことのない素晴らしい景色を見ることができたし、新たな価値観を手に入れることもできました。
途中下車から再び戻った後は、新たな会社で一から始めましたが、更に多くの経験と前職よりも格段に良い待遇を得ることができました。
当時は横道に逸れる思いでしたが、結果的には急がば回れでした。
このような怒りもあるわけで、正に怒りが背中を押してくれるようなものです。
何度考えても決断できずにいたことが、全く躊躇することなく即断できてしまう。
怒り特有の爆発的なエネルギーが「清水の舞台から飛び降りる」勇気をくれたのでしょう。
怒りとの付き合い方
1. このように怒りにはとても強いエネルギーがありますが、
単なる負の感情として捉えるのは正しくありません。
2. 先に述べた通り、
怒りは古代では生死を分ける重大時に発揮され、今よりも格段に重要であったと考えられます。
3. 今日(こんにち)はそこまでの重大さはないにせよ、
自己の存在意義や大事なものを守るために、引き続き怒りを上手く働かせることが可能です。
4. 変わらないことは、古代でも現代でも怒りのエネルギーは強力だと言うこと。
この強力なエネルギーを、現代の私たちはどう上手く活用するかが重要です。
5. ポジティブな方向で使えば、
先に述べた「負けず嫌い」のように、自己の能力を向上させることに役立ちます。
6. 反対にネガティブな方向で使えば、
周囲を不快にするだけでなく、自分自身も不快になることに繋がります。
7. 人は完璧ではありません、ネガティブな方向で使ってしまうこともあるでしょう。
けれどもその後でもう一度怒りを見つめ直し、自分自身の怒るパターンを知ることです。
一次感情はどうだったのかも含めて。
8. 怒るパターンを知れば、良きにつけ悪しきにつけ自分のクセが分かります。
クセが分かれば、ネガティブに動きそうな時は早々に人を避けるなど、事前に対処することも可能です。
9. 単に怒りを抑えようとするのではなく、
怒りと対話するかの如く、付き合っていくように心がけると良いでしょう。
先に述べた「怒りの後押し」のように、怒りに勇気を貰うこともあるかもしれません。
10. そうすれば「怒り」は良き助太刀であり、最強の切り札になるのです。